ミッション・インポッシブルⅠ
私はトム・クルーズが好きだ。
ミッションシリーズは特にお気に入りの映画で全作観ている。
今回は先日海外旅行へ行った際に、飛行機の中でようやっと観れた最新作についてのレビューをば。。
……ではなく。笑
これは、一人暮らしのための物件を決めるべく不動産屋に訪れたときの目に見えぬ敵との仁義なき闘いの記録である。
時は2月も終わりを迎えるころ。
ありがたいことに就職先も決まって半年が経った。
そしていよいよ新生活をスタートさせる拠点を決める時が来た。
というわけで、浮足だった田舎者の私は新居を契約するため意気揚々と不動産屋の扉を叩いた。実際には自動ドアだったので叩く間もなく開いたわけであるが。
恥ずかしながら、私は生まれてこのかた一人暮らしを経験してこなかった“一人暮らしビギナー”である。
大学も割と遠かったが、
「電車1本でいけるし、お金もったいないから通っちゃえ☆」
というノリで実家から通っていた。
入学して間もなく、1限に出るには5時半起きしなければならないし、終電は22時ジャストだから飲み会も1次会で帰宅という苦行に過去の自分を呪うことになるのだが。
なぁにが、「通っちゃえ☆」だ。このド阿呆。
と、まあそんな訳で
『道草、家を借りるってよ。』
である。
時刻は11:00。
部屋探しに憧れを抱いた純粋無垢な田舎者は
「内見?ボンビーガールで予習済みだぜかかってこい!」
と期待を胸に抱いていた。
ふふふ。どれどれ私のお眼鏡にかかるお部屋はどの子かな??
「あ、ここ、いいですね。駅近いし。」
「じゃあ管理会社に空室確認してみますね。」
…
「もう申し込み入っちゃってるみたいでした。」
「ここは安いし良さそう」
…
「入居できるのは4月入ってからですね」
「じゃあここ!ちょっと遠いけど綺麗」
…
「まだ入居中なので内見できないみたいです…」
なんということでしょう。
せっかくボンビーガールで予習してきたし、部屋探しの醍醐味と言っても過言ではないのに、そもそも内見できる物件が見つからないという事態。
「僕らどんだけ日頃の行い悪いんすかね~ワハハ」
なんて担当さんも若干投げやりになってきました。
この時点で時刻は13:00を回ったところ。
2時間も担当さんと二人でパソコンとにらめっこしている。
もうことごとく空振りで終わっているので、ついに管理会社への確認の電話で枕詞が
「もう終わっちゃってると思いますが~」
になった担当さん。
つらい。
諦めたらここで試合終了ですよ?
もうパソコン画面の何たらコーポとか建物の名前がゲシュタルト崩壊し始めたころ。
「え、ここ良くないですか?」
「ほんとですね。確認してみましょう」
…
「内見、できるみたいです!!」
ついに!内見できる部屋見つかりました!!
もう部屋決まったレベルの喜びだったんですが、冷静に考えてください。まだ、内見です。
とまあ、2軒ほど内見できるところを見つけていざ出発。
1軒目。
もう外観が好き。
この時点でさっき店舗で死んだ魚の目でパソコン画面を見ていた田舎者と同一人物とは思えないほどテンションが上がっている。
部屋に入った瞬間、
「え~すごい!」
「めっちゃすごい。収納もすごい!」
「すごい!凄い!スゴイ!SUGOI!!すg…」
合コンのギャル並みの語彙力になってしまった。
この時点で「もうここにする!」と心は決まっていたけれど、とりあえず2軒目へ。
ほとんど覚えていないが、
「入った瞬間なんか味噌汁の匂いしましたよね~」
「「ワハハ」」
なんて担当さんと話しながら店舗へ戻っていく。
さて、あとは書類を書いて送ってしまえば申し込み完了。
内見前の殺伐とした空気とは一変した担当さんが
(やっと決まったよ、長かったなこいつ…早く終わらせてお昼たーべよ☆)
とでも言いたそうな安堵の表情を浮かべて
「念のためもう一度確認しときますね~」
と再度電話を。
もうあの部屋で始まる一人暮らしライフに思いを馳せつつ書類にペンを走らせる私。
担当さんが戻ってきた。
「あの…」
いたずらが見つかった子供のような心許ない顔の担当さん。
「内見してる間に、申し込み入っちゃったみたいです…」
「…へ?」
「内見しないでそこの物件に決めちゃったらしくて…」
Oh...
あの高揚感は?
社会の酸いも甘いもともに乗り越えると誓ったはずの私の部屋は??
上司に怒られて一人で泣いたり、友達なんか呼んでお泊り会♪
なーんて考えてた私の夢の新社会人ライフは???
まぼろし~~~?!(cv. IKKO)
憧れは、憧れのままの方が成就するより幸せなこともあるということですね…
イーサン・ハントも驚愕の不可能ミッション。
目に見えぬ敵の存在を知ったところで、
部屋探し1日目、終了です。
仁義なき戦いは続く…